伊吹山(南面)の花-6月(08/6/7)
6月(08/6/7)に伊吹山南面(正面)から登った時の花です。
北尾根と南面とでは植生が全く違います。
北尾根は自然のままの落葉樹林帯、それに対して南面は、
もとは徳川家の薬草園ということで、
人工的に維持されている草原です。
現在も、地元の人たちが、毎年草刈りや木本の駆除を行って、
草原を維持しています。
日本の植物の「ガラパゴス」のようなところです。
掲載種:アヤメ、グンナイフウロ、ハクサンフウロ、ハクサンハタザオ、
ヒメレンゲ、ウチャクソウ、カンボク、キバナハタザオ、キバナノレンリソウ、
コナスビ、クサタチバナ、ヒヨクソウ、ノビネチドリ、コケイラン、ノコギリソウ、
サワギク、ウリノキ、ヤマガラシ、イブキガラシ
アヤメ(菖蒲) あやめ科。
アヤメは山野の草原に生育する多年草です。いずれ菖蒲か杜若という言い方で、
同じ仲間と思われていますが、カキツバタは水辺の植物で、アヤメは草原の植物です。
アヤメの名は、花の網目模様からそれを綾目(あやめ)と呼んだというのが一説です。
アヤメの漢字は普通は菖蒲を当てますが、文目、綾目とも書きます。
実は、野生のアヤメを見たのはこれが最初のような気がします。
アヤメ自体は多くの所で見ることができますが、たとえ自生地と言われている所でも、
公園化されて保護・管理されていることが多いです。
でも、伊吹山もそういう意味では、保護地区ですよね。
本当に、「勝手に生えている」というところは少なくなったのでしょうか。
先日(13/5/9-10)行った松本から美ヶ原への道路沿いには、アヤメが普通に咲いていました。
適切な季節に、適切な場所に行けば、野生のアヤメが見られるようです
(13/6/30)。
グンナイフウロ(郡内風露) ふうろそう科。
山地に生える多年草で、分布は伊吹山以北の本州・北海道です。
フウロソウの仲間では比較的大型で、花は赤紫色でよく目立ちます。
グンナイ(郡内)とは、山梨県都留郡に由来する、とあります。フウロソウは地域による変異が大きく、
細かく分類されていて、素人には判別が難しいものです。
グンナイフウロの特徴は、非常に長い花柱で、写真でもそれが花弁から突出しているのが
分かると思います。
ハクサンフウロ(白山風露) ふうろそう科。
伊吹山で見つけたもう一つのフウロソウです。葉や花の形から、明らかに別種とわかります。
葉の形などから、ハクサンフウロと推測しました。
ハクサンフウロは、山地の草原に生える多年草で、分布はやはり伊吹山以北とあります。
グンナイフウロ、ハクサンフウロとも、伊吹山が南限になっています。
伊吹山の生い立ちを考えると、元々自生していたものではなく、
どこかの時点で人為的に持ち込まれたものが、
適環境を得たことで根付き、群落を作るまでになったのかもしれません。
ハクサンハタザオ(白山旗竿) あぶらな科。
白山の名がありますが、低山から高山まで、草地から砂礫地まで、
幅広く分布する多年草です。花色は、白色から薄紅色まで個体差があるようです。
茎は軟弱で、直立するより地を這うような印象があります。
その割に花茎は長く糸のように延びているため、絡まった糸玉のようにも見えます。
また、根生葉は「頭大羽状に分裂」とあり、これも一つの特徴になります。
北尾根にもこの季節(5月上旬)いっぱい咲いていて、最もポピュラーなものの一つでした。
ヒメレンゲ(姫蓮華) とうだいぐさ科。
マンネングサの仲間の多年草で、山地や谷間の苔のはえた岩上に生える、とあります。
平地に生えるツルマンネングサ、メキシコマンネングサなどともよく似ており、
生育場所を除いて判別しようとすると、結構難しいような気がします。
ここでは、岩場に生えるのはメノマンネングサとヒメレンゲと考え、
花が花茎の先端に散状についているとしてヒメレンゲにしました。
珍しい植物ということはないのですが、
伊吹山では大群落になっているのを見たことがありません。
生育に適した環境が少なく、孤立しているからでしょうか。
ホウチャクソウ(宝鐸草) ゆり科。
ホウチャクソウについては、岐阜近郊で取り上げましたので、
ホウチャクソウ
をご覧ください。
カンボク(肝木) すいかずら科。
本州中部以北に普通な落葉低木-小高木で、樹高3-6mになるとあります。
中心部の両性花の周りを5弁の装飾花が取り囲みます。
このような「アジサイ型」ともいえる花は、すいかずら科(ヤブデマリ、カンボクなど)と
ゆきのした科(ガクアジサイ、ノリウツギなど)とがあり、同定には注意が必要です。
カンボクでは、装飾花の5弁は非対称で大きさが異なることが多いようです。また、
葉は不規則に3裂するのが特徴で、このような花をつけるものの中ではこれはカンボクだけです。
秋には、真っ赤な実を多数つけます。実は美味しくないのか、よく冬まで残っています。
キバナハタザオ(黄花旗竿) おあぶらな科。
本州(岩手-岡山)の山地、対馬に生える比較的まれな多年草とのことです。
伊吹山には比較的たくさんあったように記憶しますが、なにせ薬草園として整備された山ですので、
「自生」と言えるのかわかりません。
ハタザオの名前を持ちますが、ハタザオ属ではなく、カキネガラシ属です。
花の姿も、「旗竿」のような棒が立っているという印象は薄いです。
キバナノレンリソウ(黄花の連理草) マメ科。
ユーラシア大陸、北アフリカに分布する多年草で、
北アメリカに帰化、牧草としても利用されている、とあります。
伊吹山には、「信長の命によりヨーロッパから持ち込まれた薬草に紛れて帰化した」、
との説明がWikiにあります。外来雑草の侵入方法の典型です。
でも、それがなぜか逸出することも、絶滅することもなく、伊吹山だけで生き延びたのです。
それで今では、絶滅危惧種として保護対象になっているようです。数奇な運命の植物です。
コナスビ(小茄) さくらそう科。
野原、道端に普通に見られる多年草で、岐阜大学にも雑草化して生えています。
でも、さくらそう科らしく、つつましく咲いている姿は、
雑草ではなく野草と呼んであげてもよいでしょう。
初めてこの花を見たとき、科が推測できなくって、
同定にひどく時間がかかった記憶があります。
名前の由来ですが、この果実が茄子の形に似ているからとか、
確かに似ていないこともない、という程度に似ています。
クサタチバナ(草橘) ががいも科。
山地に生える多年草です。関東以西、四国に分布するとあります。
準絶滅危惧種に指定されていますが、伊吹山では大群落を作っています。
そもそも、ががいも科、というのも普通にある植物ではなく、
花を見ても見慣れない花という印象を受けます。
名前は、花がミカン科のタチバナのそれに似ているというのですが、
これも似ていないことはない程度です。
昔の人は、珍しい、見知らぬ花を見たとき、
自分の知っている植物の中で、一番似ているものを思い浮かべ、
それに沿って名前を付けたのでしょう。
ヒヨクソウ(比翼草) ごまのはぐさ科。
日当たりのよい山地に生える多年草です。
クワガタソウ属で、同じ仲間のオオイヌノフグリの花を大きくした感じです。
ヒヨクソウの名前は、花序が対になって左右対称に伸びているのを、
比翼の鳥の翼に見立てたものです。
ちなみに、この「比翼の鳥」、中国の伝説の鳥で、
「一眼一翼(一説には、雄が左眼左翼で、雌が右眼右翼)の伝説上の鳥で、
地上ではそれぞれに歩くが、空を飛ぶ時はペアになって助け合わなければならない」
というものです。古の人の名付けの巧妙さには、感服してしまいます。
ノビネチドリ(延根千鳥) らん科。
四国以北の樹林下に生える多年草です。類似種としてテガタチドリがありますが、
葉の幅が広く、波打つようになっていることから、ノビネチドリとしました。
テガタチドリ、ノビネチドリの名前は、
肥厚した根茎の形が手の形であるのがテガタチドリ、
それに対して長く伸びているのがノビネチドリだそうです。
山で根を掘り起こすわけにもいかず、そんなことを言われても…、という感じです。
チドリのほうは、花が千鳥が飛ぶ様子に似ているといわれると、納得できます。
コケイラン(小蕙蘭) らん科。
山林内に生える多年草です。葉は1、2個、それとは別に花茎を伸ばし5-6月ごろに
花をつけるとあります。残念ながら、葉の写真がなく、
コケイランであっているのかどうか自信がないですが、
花の形からコケイランとします。
実は、同じ花は今年(2013年春)北尾根でも見ています。
なので、伊吹山ではそれほど珍しい花ではないのかもしれません。
でも、一般登山者にとって野生のランに出会える機会は少なく、
これだけで山に登った甲斐があった、と思えるほどです。
次回出会えたら、今度は忘れずに葉も写すことにします。
ノコギリソウ(鋸草) きく科。
中部以北の山野に見られる多年草です。
葉の形が鋸の歯のようなので、この名前があります。
花色は白色もしくは薄紅色です。薬草として止血の効果があり、属名のAchilleaは、
アキレスがケンタウロスから効能を教えられ、自軍の兵士に与えたことに由来するとあります。
西洋ノコギリソウが園芸品種としてあり、一部野生化しています。
低地にあるもの、花色の綺麗なものは、西洋ノコギリソウと考えた方がよいでしょう。
サワギク(沢菊) きく科。
深山の湿地に生える2年草です。サワギクの名前は、
山の沢などに多くみられるということでしょう。
歯車のように隙間の空いた舌状花が特徴的です。
ボロギクの名前もあります。雑草に○○ボロギクがいくつかあり、
同じ仲間かとも思われますが、かならずしも類縁ではありません。
ボロギクの名前は、果実の冠毛がぼろ(襤褸)のように見えるからとか、
でもキク科はその点では似たようなものだと思うのですが…。綺麗な花なのにボロギクは可哀そうです。
ウリノキ(瓜の木) うりのき科。
山中の林床に生える落葉低木です。うりのき科は1属20種とありますが、
日本にはこのウリノキのみが自生しています。
名前は、葉が瓜の葉に似ているからとのことです。葉は薄くて広く、
わずかに3裂します。花の形はとてもユニークで、
花弁がカールした形は、まるでランプを垂らしたようです。
ヤマガラシ あぶらな科。
ヤマガラシ/イブキガラシ(山芥子/伊吹芥子) あぶらな科。
中部以北の深山の谷沿いに生える多年草です。山にある芥子なので、ヤマガラシです。
伊吹山にあるのは、ヤマガラシの変種でイブキガラシと呼ばれています。
伊吹山の固有種とありますが、普通のヤマガラシとイブキガラシはどこが違うのか、
よくわかりません。ヤマガラシは、伊吹山では大きな群落をなしています。
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