伊吹北尾根の花(09/5/9)
伊吹北尾根を南から北に縦走した時(09/5/9)の花の写真です。
季節がよかったのか、多くの(私にとって)珍しい花に出会うことができて、
楽しい山旅になりました。長らく放置されていたのですが、今回意を決して整理をしてみました。
その多くは、春に他の植物に先立って芽吹き、花を咲かせ、
夏山が樹木でおおわれるころには地上部は枯れてしまう、
Spring ephemeral
(春の妖精)と呼ばれる一群の植物です。
彼らは、草丈の割に大きく、とてもきれいな花をつけてくれます。
草原や落葉樹林帯など、春に日差しが差し込む所でのみ見られる植物です。
このような環境が、人里近くで維持されていることは、とてもうれしいです。
掲載種:(ヤマエンゴサク、ルイヨウボタン、ヤマブキソウ、ラショウモンカズラ、
フデリンドウ、ヒトリシズカ、キクザキイチゲ、コンロンソウ、クルマムグラ、
クサボケ、マムシグサ、メノマンネングサ、ニリンソウ、シャク、
チゴユリ,ヤマルリソウ,ヤマシャクヤク)
ヤマエンゴサク(山延胡索) けまんそう科。
山野の湿った林内、草原に生える多年草です。
典型的なSpring ephemeral です。
類似種にエゾエンゴサクがあるのですが、写真だけでは判別は私には困難です。
でも、分布域がエゾエンゴサクは中部地方北部以北とあるので、ヤマエンゴサクとしておきます。
葉は、3枚の小葉からなりますが、楕円形から細長い線形まで、変異があるようです。
なお、延胡索とは漢方での生薬の名前で、エンゴサクの根茎を鎮痙、鎮痛薬として用いるそうです。
ルイヨウボタン(類葉牡丹) めぎ科。
広葉樹林の林床に生育する多年草です。葉が牡丹に似ているのでルイヨウ(類葉)ボタンと
名付けられたそうです。確かに葉はボタンを連想しますが、
花は個性的というか、不思議な形で、初めて出会った時には
花の形から科名を推測することが、全くできませんでした。
外に張り出した大きな花弁、中心の小さな輪と雄蕊、色もちょっと透き通るような黄緑色で、
造花のような美しさです。
ちなみに、大きく目立つ6弁のものは愕片で、その中にある台座のようなものが花弁です。
クリックして拡大してみてください。図鑑では、ルイヨウボタン属は本種のみです。
ヤマブキソウ(山吹草) けし科。
深山の湿った林中に生える多年草です。ヤマブキはキク科ですが、
本種ヤマブキソウはけし科です。花の雰囲気がヤマブキに似ているというのでしょうか。
ヤマブキよりも花は大きく、花色もけし科特有の鮮やかな黄色で、
薄暗い林中ではよく目立ちます。
Wikiではヤマブキソウ属になっていますが、クサノオウ属に入れられる(北村図鑑)こともあり、
クサノオウに似ていると言われると、なるほど、という気になります。
各地で個体数が減少しているようで、地域によっては保護の対象になっています。
ラショウモンカズラ(羅生門葛) しそ科。
山地の湿った林内に自生する多年草です。一目でしそ科とわかる、
唇形の花を数個まとまって同じ方向に向けて付けます。
Wikiには「渡辺綱が羅生門で切り落としたとされる鬼女の腕に見立てた」とありますが、
昔の人は想像力が豊かだったのでしょうか。
そう言われてみると少し不気味な美しさがあります。
私には、妖怪が虎視眈々とこちらを狙っている顔のようにも見えます。
図鑑では、ラショウモンカズラ属は本種のみです。
フデリンドウ(筆竜胆) りんどう科。
草丈5-10cmの小型の越年草です。
これもSpring ephemeral です。
類似種にハルリンドウがあり、よく似ていますが、
ハルリンドウは根生葉から花茎を伸ばし、先端に一つの花をつけるのに対して、
フデリンドウは互生する葉をもった茎の先に花を1−数個つけます。
日当たりのよい山地の林内や草原に自生します。
花色は、ハルリンドウの方が濃い青紫で、フデリンドウは淡い赤紫、という感じがします。
ヒトリシズカ(一人静) せんりょう科。
山地の林内に生える多年草です。4枚の葉を輪生させ、
その中心にブラシのような白い花を咲かせます。
個性的な花のため、一度見ると見間違うことはありません。
花は静御前(義経の妾)に見立てたというのですが。
ちなみに静御前は白拍子で、「静の舞」で知られています。
この花も、静御前が舞を舞っているところなのでしょうか。
昔の人の命名力は素晴らしいですね。
近頃の植物名は、地名(アメリカ、メキシコ)やオオ、コ、ヒメ、
をくっつけるだけで、つまんないものが多いです。
なお、類似種に花穂を2本出すものがあり、フタリシズカ
と呼びます。
キクザキイチゲ(菊咲一花) きんぽうげ科。
林床など山の木陰に咲くイチリンソウの仲間(Anemone)です。
イチリンソウの仲間は変化が大きく分類が難しいです。
一般にイチゲと呼ばれているものは、地下茎から花茎をたて、
葉の上に一輪の花を咲かせます。
イチゲには、ヒメイチゲ、エゾイチゲ、アズマイチゲ、ハクサンイチゲ、ユキワリイチゲ、
イチリンソウなど葉の形、分布域、花の形の異なるものがあり、分類は大変です。
本種は葉の形が菊に似ているのでキクザキイチゲとしました。
残念ながら、写真は花が白く飛んでしまいました。薄暗い林床で、白い花を撮るのは本当に難しいです。
コンロンソウ(崑崙草) あぶらな科。
山地の谷沿いなど、湿地に自生する多年草です。
草丈は40-70cmになります。コンロンソウとは、たいそうな名前ですが、
白い花を崑崙山脈の冠雪に例えたものだとか、中国からの帰化植物ではありません。
春にアブラナ科特有の白い十字架花を咲かせます。
葉は私の持つアブラナ科のイメージと違い、少々面喰いました。
この季節、生い茂る草原の中で白い花を咲かせているのですが、
あまり目立つものではありません。
(菜の花のように)群落になっていれば、また印象が違うのでしょうか。
クルマムグラ(車葎) あかね科。
落葉樹林の林床、草原などに生える多年草です。ヤエムグラの仲間(Galium)ですが、
ヤエムグラのように毛でおおわれていないので、光沢のあるつるっとした感触の葉です。
類似種にオクルマムグラがありますが、葉の形が先端が尖っているのが本種、
丸まっているのがオククルマムグラということで、クルマムグラとしました。
○○ムグラと呼ばれるものは、クルマムグラ、ヤエムグラと、輪生葉が4枚のヨツバムグラの仲間
(多数種)があります。
クサボケ(草木瓜) ばら科。
関東以西の山野に自生する落葉低木です。
クサボケとありますが草ではありません。
平安時代に中国からボケが花木・生薬として入ってきて、それと区別するために、
樹高数十cmのブッシュ状になる本種をクサボケと呼んだものでしょう。
葉も、花もボケとそっくりです。また、ボケ特有の棘もあります。
秋に熟す実は芳香があり、生食には向きませんが、果実酒などに利用されます。
乾燥した実は漢方で用いられ、木瓜(もっか)にたいして和木瓜(わもっか)と呼び、
強壮、鎮咳、などの薬効があるそうです。
マムシグサ(蝮草)さといも科。
山野の林床に生育するテンナンショウ属の多年草です。
マムシの名前ですが、茎(偽茎)がまだら模様でマムシに似ているからとか。
このあたり(東海・近畿?)では、テンナンショウの仲間では一番多く見られるのが
マムシグサです。
と書いてみたものの、北村図鑑を見ると膨大ともいえる(40近く)テンナンショウ属
の種が掲載されています。
○○マムシグサと名のつくものだけでも、ムロウマムシグサ、ムラサキマムシグサ、オオマムシグサ、
ツクシマグシグサ、ユモトマムシグサ、、、。
素人愛好家にはマムシグサ一つで十分です。
雌雄異株で、雌花は秋に赤い実をつけ、よく目立ちます。
里芋の仲間ですので地下の球根で越冬します。
この球根を含めて全草が有毒です。
里芋が食用になるので意外かもしれませんが、サトイモ科の植物の大部分は有毒植物です。
メノマンネングサ(雌の万年草) とうだいぐさ科。
山野の岩場など乾いた場所に自生する多年草です。
河川敷などに群落を作っているメキシコマンネングサと同じ仲間で、草姿、
花なども非常によく似ています。日本に自生するマンネングサの仲間は、
コモチマンネングサ、マルバマンネングサ、タイトゴメ、ヒメレンゲなどですが、
生育場所、葉の形などからこれらは区別可能です。
しかしながら、図鑑にはそれ以外に様々な地域変種が紹介されています。
ここでは、山地の岩場などに生えているマンネングサは、
メノマンネングサとヒメレンゲと考え、分岐した花序に多数の
花をつけているので、メノマンネングサとしました。
ニリンソウ(二輪草) きんぽうげ科。
山地の木陰など湿ったところに生える多年草です。イチリンソウの仲間(Anemone)なのですが、
大群落を作っていることが多く、草丈も大きめで、可憐というよりはしぶといという
印象があります。二輪草だから花は二個と思いますが、一個や三個のものもあります。
写真は花期を少し逸している感じで、最盛期には一面花だらけ、という感じになります。
若芽は山菜になるそうですが、きんぽうげ科の有毒種との区別が難しく、
しばしば中毒事件を起こします。
シャク(杓) せり科。
山地の湿ったところに分布する多年草、とありますが、
わりと適応力があり、山際の道路沿いなどに雑草化しているのを見かけます。
草丈も80-140cmと類似種のなかでは大型で、判別しやすいものです。
葉は2回3出羽状複葉と呼ばれるもので、ニンジンの葉を大きくした感じです。
ヤマニンジンの別名があります。せり科ですので、若葉は山菜になります。
根は漢方で生薬として利用されるほか、根のデンプンを取り出して米などと混ぜて
「力餅」を作る、とあります。
花形が面白いのでUPでとらえた写真を掲載しました。花弁の大きさが不揃いで
外側の花弁が大きくなっていることがわかります。
でも、そのおかげで、集合花があたかも一つの花に見えるのです。
どこかで見かけたら、ぜひ花弁を見てやってください。
チゴユリ(稚児百合) ゆり科。
落葉樹林の林床に生える多年草で、やはりSpring ephemeralです。
チゴユリのなまえがぴったりな、可憐な感じの花です。
種子繁殖のほか地下茎でも増えるので、群落を作っていることが多いです。
一部の地域では絶滅危惧種指定がなされているとのことです。
いわゆる雑木林などで、手入れ不足から常緑の下草(笹など)が侵入すると、
Spring ephemeralは生育できなくなります。
落葉樹林帯のような彼らに適した環境が、人里近くでは失われていくのはさびしい気がします。
ヤマルリソウ(山瑠璃草) むらさき科。
落葉樹林帯の林床や道端などに自生する多年草です。
花は、ワスレナグサにそっくりです。根生葉はロゼット状で、
花茎も斜めに地表を覆うように伸びます。
開花期には、葉は小型ですが、その後葉は20cm程度の大型になります。
それなりにきれいな花と思うのですが、あまり注目されずに、
山道のわきでひっそりと咲いているのを見かけます。
でも、彼らは人間を楽しませるために咲いているわけではないので、
注目されないのは幸せな気がします。
類似種にルリソウがありますが、こちらは茎が直立し、草丈3-40cmになります。
ヤマシャクヤク(山芍薬) ぼたん科。
落葉樹林帯の林床に自生する多年草です。草丈は3-40cmくらいで、
先端に4-5cmの牡丹に似た花を一個咲かせます。
山に咲く芍薬ということで、ヤマシャクヤクです。
なかなか格調のある花姿で、山道で出会うと感動します。
山野草としても人気があり、園芸業者により育種、販売されています。
個人的には、山野草は山野にあるから価値があるので、苦労して育てるのであれば、
いくらでも優れた園芸植物があるのではないかと思うのですが。
別に、山野草の人気を僻むわけではないのですが、
カタクリやササユリなど、有名な山野草の自生地は盗掘などで絶滅したり、
逆に縄や杭などで囲い込まれ厳しい監視下に置かれたり、いずれも山野草にとっても、
その愛好者にとっても不幸なような気がします。
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